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2010年4月12日 (月)

【対談】康 芳夫(国際暗黒プロデューサー) 最終回

団:
その昔、たしか新宿御苑に面した辺りに
家畜人ヤプーのファンが集まるスナックみたいな店があったよね?
康さんあそこにも関係してたの?

康:
はははっ。先生、関係してたどころかオーナーみたいなものですよ、僕は。

団:
あらっ、なんだそうなの(笑)。
僕も二、三度覗きにいったことがありました。

リポーター:
僕も先生がやってた雑誌「SMキング」の取材で行きましたよ。

康:
いやあ、実はあのスナックの入ってたビルは
当時読売巨人軍の王選手の持物で、
彼は同じ中国人でもあり昔から友達なので、
その一階を借りて「家畜人ヤプークラブ」っていうのを作ったんです。

リポーター:
その名もズバリですか(笑)

康:
そうしたらこれがメチャメチャ流行っちゃって。
当時の若手の作家、遠藤周作、吉行淳之介、立原正秋なんかが
銀座からホステスを連れてきてました。

団:
そう、たしか余りにハチャメチャやったもんで
パトカーなんかも良く来てたらしいね。

康:
今で言うところのハプニングバーですね。
中で客同士がSMプレイおっ始めるし、まさに阿鼻叫喚の生地獄さながらでした。
最後にはこれ以上エスカレートするとまずいってことになって
自主閉店にしました。
半年くらいでしたか。

団:
懐しいね、昭和四十年代の香りがする。
そう言えばあの当時から
会員制のSMクラブが都内にポツポツあったよね。

康:
そうです。非営利で本当の同好の人間のみの。
弁護士、医者、大学教授、俳優、文化人……。
僕も呼ばれていったけど、まあとんでもない光景でした。
そこに来ていた人の名前を言っちゃうと、
週刊新潮の特集記事が5週間くらい埋っちゃう(笑)

リポーター:
そう言えば先生が主宰していた鬼プロの来客も錚々たる顔ぶれでしたね。

団:
『鬼プロ繁盛記』に書いていますから是非、読んでください(笑)

康:
ところで先生と文学の関わりって?

団:
いやあそれが大したことないんです、正直言って。
うちにあった小説と言えば、吉川英治の「宮本武蔵」とか、
久保田万太郎、川口松太郎らの大衆文学ばかりでした。

康:
先生はたしか三浦三崎で英語の教師をやっていらっしゃったですよね。
すると欧米文学はかなり読まれた……?

団:
いやいや、それが自慢じゃないけど、外国文学はまったく苦手でした。
当時流行っていたモーパッサンもフローベルも、
トルストイもヘミングウェイも一度も読んだことがないんですわ(笑)

リポーター:
そうそう、鬼プロにいた頃、当時のSMキング編集長に
君はジョルジュ・バタイユやマルキ・ド・サドを読んだことあるのかって聞かれて、
ポカンとした顔をしたら、
彼がそんなことでSM雑誌を作れるかってひどく馬鹿にされました(笑)
先生が横で聞いていて、
いらんいらん、SMは人間の心理学だ、
坂口安吾とか太宰治を読めば十分と助け舟を出してくれました(笑)

康:
その日本主義者の団先生が、
よくぞ家畜人ヤプーに目を付けてくれましたね。

団:
まあ一種のないものねだりかも知れませんね。
それとあの本を日本人が書いているというのも、理由の一つです。
しかも覆面作家だという好奇心もあるね。
僕は根っからの関西人なのか、ものを書くのは商売として儲かるって思ってました。
ペン一本、紙一枚で原価がほとんどかからない。
理屈は関係なしです。だから文学青年とは肌が合わない。
その癖家畜人ヤプーには妙に引かれた。
中味は小難しくて余り分らなかったけど(笑)
おそらく、趣味人の匂いがしたんでしょうね。

康:
先生は実際のセックスでSMプレイはなさらないとお聞きしましたが。

団:
そうです。縛りとか鞭とか、ありません。
ノーマルもノーマル、だからそんなことを期待してこられる女性にしたら、
なんだ大したことないじゃないってよく言われる(笑)
すべて妄想の産物ですよ。

康:
だから家畜人ヤプーに興味を持たれたんですよ。
あれも超インテリ人間の100パーセント妄想ですから。

団:
私の場合、映画やポルノビデオをいくら見ても興奮しません。
やっぱり活字なんです。
でも最近のポルノ文学、官能小説は薄口すぎて、まるで興奮しなくなりました。
むしろ、素人に近い新人が書く官能手記にエロチシズムを感じますね。
だからこの悦楽の森文庫でも、どんどん新人作家を起用していこうと思っています。
とくに欲求不満の最たる存在の主婦やOL、
彼女たちが書く小説には匂いと体温が感じられますよ。

康:
先生が精力的にSM小説を書いておられた昭和四十年代は、
SMって言葉自体が発禁みたいに扱われていた気がします。
それがいまどきの高校生ぐらいの女の子が平気でSMって言葉を使っていますよね。

団:
たしかにまるでファッションみたいに思ってるね。
ボンデージ、スパンキング、皆横文字ですよね。
ところが、ソフトになればなるほど、マニア以外の読者が増えていきました。
私の「花と蛇」なんかトータルすると100万部は軽く超えたらしい。
もっともあれは昔からマニアックなんですが。
こちらとしては儲ってしかたないけどね(笑)

康:
この間、二十二歳の大学院にいる女子大生と話しをしたんです。
キミ、団鬼六って作家、読んだことあるかって。
そしたら、あっ、杉本彩の「花と蛇」の原作者でしょって。
僕が一度欺されたと思って読んでみなさいって。
すると彼女、ネット検索で「花と蛇」を買って読んだらハマっちゃって。
いまではオナニーのおかずNo.1らしいです。

団:
えらい時代になったもんやね。「花と蛇」をおかずにしてるんだ(笑)。
毎度ありがとうございます(大笑)
ところで実際の沼さんって、どんな方なの?

康:
沼さんの夜の顔については、凄まじいことがいっぱいありましたよ。
彼の家の近くにあった東京女子大の旧式女子トイレの肥溜めに忍び込んで、
消毒液で全身を火傷したり、とか。
さっきの家畜人ヤプークラブでの奇行なんか数え切れない。
倉橋由美子君の「マゾヒストM氏の肖像」のモデルはまさしく彼です。
倉橋由美子自身が沼正三のファンだったので、あの小説が成立したんでしょうね。

団:
僕は三島由紀夫って作家は生理的に好きじゃないんだけど、
その三島が家畜人ヤプーの熱狂的ファンだというのは
大いに理解できるんです。

康:
それは三島由紀夫自身にM的な傾向があるからでしょうか?

団:
それもあります。
三島がホモセクシャルだったということも多少あります。
大体がマゾのホモセクシャルというタイプの男は外見、マッチョで仁侠道が好きだね。
それに大変なおシャレです(笑)

康:
東洋の風水学における陰陽と、SMって対比はどこか似ている気がするんですが。

団:
私もそう思うね。両極という以外にも、一つの象徴的な価値観としてですね。

康:
男女問わず、誰しもSとM、どちらもある……。

団:
そうです。全員にあるんじゃないでしょうか。
その狭間に俗にSM小説ってものがある。
男って偉そうな奴ほど、案外、M的な人間が多くてね。
インテリの場合もそうです。

康:
たしかにインテリと呼ばれるタイプほど精神面の斬った張ったに弱いですね。
ナイーブすぎると言うか。脆いと言うか。
純粋さゆえに、一方ではそれをメチャクチャにしたい。
いわゆる二律背反、アンビバレンツです。

団:
私が自著のサインに添える言葉に
"何しようぞ、くすんで一期は夢よ、ただ狂え"があるんです。
室町時代の歌謡を綴った「閑吟集」の一節です。
文学だってエロだってええじゃないか。
人が騒いでたとえひとときでも元気になれば、それでよしとしましょうか(笑)


(完)

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