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2010年4月 9日 (金)

【対談】康 芳夫(国際暗黒プロデューサー) その2

リポーター:
海外経験の長い康さんにお聞きしたいのですが、
SMプレイの象徴的なプレイであり表現である「緊縛」は、
日本と西欧ではかなり違いがあるのですが?

康:
ヨーロッパで言うと緊縛という概念はドイツを除くと、最近出てきた現象です。
アメリカを見るとあまり緊縛は好きではない。
向こうの主流は圧倒的にスパンキングです。
たまにスキンマガジンで緊縛グラビアが出てきますが、
カラッとしているというか稚拙というか・・・。

団:
たしかに欧米の縛りはただ拘束するというだけですね。
むしろ、手錠や手枷足枷の類でしょう。
どうも西洋人という人種は生まれつき不器用なんじゃないの(笑)

康:
おっしゃる通り!日本では縛り方に名称までついてますからね。
高手小手、亀甲縛り、七段縛り・・・。

団:
それは江戸時代の捕縄術から由来したんですわ。
私が「外道の群れ」という小説で責絵師の伊藤晴雨の世界を描いたとき、
緊縛術という世界が江戸時代から綿々と続いており、
春画の世界の大テーマの一つであったということを知りました。
だから余計に家畜人ヤプーに出てくる色々な器具、
中には荒唐無稽なメカニックな道具もあったんだけど、
それに興味を引かれましたね。

康:
たしかに西欧は宗教裁判や魔女裁判の伝統があるから、
拷問に器具を使うのが特徴的ですね。

団:
私はそういった責め道具を作る連中の想像力を凄いと思うね。
それを考えるときが一番の快楽で貞操帯にしろ、鉄仮面にしろ
綿密に計算されて、いかにいじめてやろう、
いかに辛いものにするにはどうしたら良いのか、
とことん突きつめているね。
その点、日本の責め具は適当といえば適当(笑)

康:
たしかにありあわせの物が多いです(笑)

団:
芸術的な作品の一つに鉄の乙女というものがあってね。
別名ニュールンベルグの処女といってます。人間の形をした大き目の箱です。
下がスカート型になっていて、最中の皮みたいにパコンと合わせる仕掛けです。
内側に無数の釘が打ちつけられていて、その中に女性を入れて、蓋を徐々に閉めていく。
下に溝が掘られ、その溝を血がつたっていくという惨酷な責め道具です。

康:
先生にお聞きしたいのですが、
覆面とか猿ぐつわといった目隠しの類は古今東西共通したものなんですか?

団:
似て非なるものですね。日本の猿ぐつわは豆縛りで口を塞ぐのですが
「アー」とか「ウウッ」とか苦悶の声が必ず洩れます。
その苦悶の声や荒々しい息づかいがエロティックなわけですね。
ところが西洋の場合、拘束具の中に金の玉が仕込まれていて、
舌の機能をシャットアウトしてしまう。
つまり、声がほとんど出ない。出るのは涎れだけです。

康:
なるほど

団:
その上、目にテープをグルグル巻きにしたりするものだから、
これはほとんどエジプトのミイラですよ。(笑)
僕が描くのは、小町娘が猿ぐつわをかまされ哀しみと屈辱で目が潤んでいる様です。
これが実に色っぽい。
西洋のイラストを見ると、目も口も全部が塞がれて、
どこにも被虐美が感じられないわけですよ。

康:
その団先生が家畜人ヤプーのような
マゾ的モダニズムの倒錯世界に引かれるというのが面白いですね。

団:
たとえば、向うでは四つん這いになるというのは、
男女を問わずに最高の屈辱ですよね。
まして、Sの女性が革製品を着てMの男の上に馬乗りになる。
そして、女はムチで男を叩きまくる。
これは、日本の倒錯エロチズムにはめったに登場しません。
まさしく、欧米ならではのエロスですよね。

康:
そうですね、
たしかに欧米は皮製品に象徴される肉食文化だし、
日本の縄やムシロは農耕民族の生み出したものですね。
まさしく皮VS縄の構図ですね。
沼さんが第二次大戦中の中国大陸で戦時捕虜を見聞きしたことが
「家畜人ヤプー」の原点になったとしばしば指摘されたりしますが、
それは部分的なものを拡大解釈しているような気がします。
彼のマゾヒストとしての性癖は、
戦争体験にだけ還元できるものではないと思います。
日本民族としてのエロスのあり方と、
ごくごく私的な自分のマゾ性が絡み合って、
その結果非日本的つまり西洋的シチュエーションを舞台としたという気がします。
三島由紀夫を筆頭に澁澤龍彦、倉橋由美子、曽野綾子、・・・
錚々たる顔ぶれが実は関わってます。
三島由紀夫に関して言えば、
三島の中に強烈なマゾヒズムが潜んでいて、
それが彼を強く揺さぶったのかと思いますが・・・。

リポーター:
以前団さんが何かの雑誌で日本と西洋のエロスの違いを鎧を例に上げられました。

団:
ヨーロッパの中世の頃の鎧と日本の戦国時代の鎧を比べてください。
機能重視の西洋の鎧に対して、日本の鎧は様式美、色彩美に溢れています。
戦いの中でもそういった美的感覚を忘れないのが
日本ならではの美意識ですよね。
たとえば僕はよく切腹における様式美を小説に書きます。
江戸時代に入ると切腹という究極の残虚行為の中にまで美意識を求めるんです、日本人は。
腹を一センチか二センチ、スゥーっと切ったところを見計って首を斬る。
それが一つの型になり、切腹の中にまで様式、作法を見出すようになるんです。
だから、何でもかんでも死ねば良いというわけじゃないんだ。
磔の絵を見ても、十文字に美しく縛り上げていて。
石川五衛門しかり、国定忠治しかり、皆見事なまでに美しい幾何模様で縛られています。

康:
その通りですね。エロチズムほど人それぞれ、国それぞれ、民族それぞれ違うものはないですね。

(続く)

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